キュウリのワンポイントアドバイス

 キュウリのワンポイントアドバイス

 

序にかえて

 

一本と100本

 

長いこと施設野菜の栽培について指導を続けているので、少なくとも日本中の各都道府県最低一回以上の講演会は開きたい、とかねてから考えていた。昨年、滋賀県を最後にこの目標は 達成された。 次は世界五大陸だと思っているが、北アメリカとオーストラリアは今のところ予定がない。 アフリカでただ一回のアルジェリアでの講演会で、キュウリやトマトの増収技術の質問を受けた。 参考のために現在どれだけの収量を得ているのか質問したところ、キュウリは株当たり 一本だと聞いて絶句した。日本では皆100本以上穫っているのだが、と説明したら今度は向こうが絶句した。筆者がおおいにモテたことはいうまでもない。 さように我国のキュウリの栽培技術は優れている。 そのキュウリ農家にワンポイントとはいえ、更なるアドバイスをお伝えすることは容易では ない。 しかしながら農家は今の技術と経営に安住しているわけではあるまい。この技術を安定させ、いま一段の向上を目指すには、並の努力では追いつかないことも承知であろう。 ここは 一つありきたりの栽培法はすべて省略してプロである農家にプラスアルファーとなりそうな項目だけにしぼって世紀末の年の初めに情報を発信しよう。 参考になる内容が一つでもあることを祈るのみである。

 

新井和夫

 

 

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『1条並木植え』ことはじめ

 

二昔も前の昭和五十年代の初め、筆者は農水省野 菜茶業試験場の久留米支場(福岡県)へ栽培研究室 長として転勤した。 折しも九州のキュウリ産地は白イボキュウリヘの 品種変更で品種や栽培法を模索中であった。それま での黒イボキュウリが、関東の白イボキュウリに押 されて売れなくなってきたからである。 10年も前から白イボを生産していた関東に追い つき追い越すのは並たいていのことではない。まず は品種も栽培法も先輩である関東のマネをしようと いうことになったがうまくいかない。やはり九州に 合った栽培法が必要だとなってさまざまな試みがな された。この「一条並木植え」もそのうちの一つで、 のちに全国に普及して行った技術である。

 

●九州は光が少ない?

日光が当たらなければ作物ができないことはだれ でも知っているが、このときほど光の大切さを痛感 したことはなかった。関東でできるものが、陽光さ んさんたる九州でできないはずがない…と張り 切って栽培してみたものの光不足が一因で関東並み にできない。調べてみると、冬の日照は日本海に近 い九州の方が関東より少ないのである。 そこであきらめるわけにはいかない。ハウスに入 る少ない光を有効に利用するために一条並木植えが 考え出された(当時関東では、畦幅株間が同じの四 ツ目植えであった)。 白イボキュウリは普通、摘心側枝穫り栽培が行わ れる。収穫は最初は下から上へと移って行くがその うちに枝に成り出すと上から下から真中からとあち

 

 

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こちに成る。その実を太らせる葉も上下の主枝にあ り、その側枝にありと樹全体に存在する。葉には勿 論、実にも光が当たる必要があるとするならば、四ツ 目上で上部の葉がすべて光をさえぎってしまうのは いかにも不合理である。 植える本数を減らせば下層への陽当たりはよくな るが、面積当たりの収量が減る。まさにあちら立て ればこちらが立たたずの典型であった。

 

●株間の陽当たりを犠牲にして

そこで3.3平方メートルの本数を四、五本と固定した上 で畦幅を十分下方まで陽光が入る180~160センチ にすると結果的に株間が45~50センチと狭くなった。 最初にこうして植えた一条並木植えのハウスに入っ て皆で見たとき、ある人が「畦間をトラックが走れ そうだ」と言い大笑いした記憶がある。しかしこの 植え方のキュウリは品質、収量ともによく、瞬く間 に九州一円に普及した。伝え聞いた高知県もこの栽培法をほどなく導入し、 果ては白イボでは先輩の関東にまで波及して行った。 現在抱き畦にしている一部の例外を除いて、ハウ スキュウリでは全国の主流となっていることを目の あたりにし、”窮すれば通ず”と言うか単なるマグレ 当たりにしても九州のキュウリ、ひいては日本のハ ウスキュウリのために画期的な栽培法だったのだなあ、とつくづく思っている。 株間は近くなるのであるから、株間の陽当たりは 却って悪くなっているはずである。その犠牲の上に 立って広い畦幅を確保し、結果的には樹の全身に採 光を得、地表まで光が到達して地温も上昇させると いう付録までついた「逆転の発想」の植え方なので あった。

 

 

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片葉呼び接ぎのコツ

 

なにごともその道の中心にいるとめずらしい(新 しい)ことにめぐりあうチャンスが多い。筆者が日 本では最初に新しい接ぎ木法〃呼び接ぎ〃に出会っ たのも、たまたま当時の野菜研究の中心、農林水産 省園芸試験場(平塚)にいたためである。その道の 大先輩が、オランダから呼び接ぎを日本に紹介した。 この上司はよほど将来を見通す目を持っていたと みえて、ついでに蒸気消毒も我国に導入した。いずれも昭和三十年代の後半ではなかったろうか。とにかくその先見性に筆者は脱帽せざるを得ない。

 

●中国にまで渡った呼び接ぎ

呼び接ぎ法は活着が容易な接ぎ木法として、ウリ 類を中心にまたたく間に日本中に広まった。ことに 接ぎ木後の養生が従来の方法(差し接ぎが主)より 簡単で、経験の少ない人でも活着率が高かったこと が普及を早めたのだと思う。 我国より遅れて施設園芸が普及した中国も、その中心はトマトとキュウリであったが、キュウリの連作障害を防ぎ、低温期に生育させるには接ぎ木技術 を必要とした。MKVの援助で接ぎ木の名人が派遣 され、中国全土に拡がった方法はこの呼び接ぎで あった。施設園芸のメッカ山東省のハウスで呼び接ぎのキュウリ苗を見せられたときには文字どおり 「感無量」のおもむきであった。

 

●呼び接ぎ法の欠点

活着率がよく、定植後の生育も良好な呼び接ぎ法 ではあったが、欠点がなかったわけではない。台木 のカボチャはともかく、接ぎ穂のキュウリは下胚軸 が細いから、台木と噛み合わせる接ぎ代を十分とる ことが難しい。どうしても薄く長く切り上げること

 

 

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になる。台木もそれに合わせて薄く長く切り下げる と、接ぎ木はなんとか可能となるが、接ぎ木部分が 細く長いため折れやすく、定植後も接ぎ木クリップをはずせないことがよくある。また成木になっても 活着不十分なため生育不良となったり、急性萎凋と なったり、まれに折れたり離れたりするトラブルが 散見される。これらは技術の上手下手に左右されることは当然だとしても、そうなりやすい接ぎ木方法 であることは間違いない。なんとか安定するよい方 法はないものかとかねてから考えていた。

 

●あえてマイナスに目をつぶる

呼び接ぎ法の不安定さの第一は、カボチャの生長点でなく、下胚軸に接ぐことにある。挿し接ぎのように生長点に接げば一本の苗となって安定するはずである。それには子葉(双葉)がジャマである。そこで生長点とともに片方の子葉を切り取ってしまう 発想が生まれた。そうしたカボチャの最上部をななめに切り下げれば生長点に呼び接ぎをすることが可能となる。 カボチャの子葉は大きく、養分も多く貯蔵されて いるので、この一枚を欠くことは苗の生長を遅らせ る。そのマイナスにあえて目をつぶるところにこの 方法の特徴がある。生育の遅れは育苗日数を1~2日長くすればよい、と割り切るのである。 次に接ぎ木のふらつきをなくすために、キュウリ 側の噛み合わせ部分の表皮を剥ぐことを考えた。表皮が存在すればその部分はカボチャの組織と融合するはずがないからである。 こうした穂と台木を噛み合わせた呼び接ぎは穂木の足切り後も安定し、クリップを早目に除去しても 折れるなどの不都合を生じることはない。実際に一 度でも試してみるとその有用性を認めてもらえるも のと思う。ある産地でこの話をしたら、すでに実行しているとのことで、役立つニュースはなにによらず伝搬が早いことにおどろいた次第である。

 

 

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水を切るのは一度だけ キュウリの灌水管理

 

キュウリは大品に水を必要とする作物である。そ れ故にいつも十分潅水して置けばよいようなものだ が、それではいろいろと不都合が生じる。キュウリ の水のやり方を考えてみたい。

 

●一本の樹で100本以上も収穫

3.3平方メートルに四本定植すると仮定すると10アール では1200本しか植えられない。18トン収量を上 げようとすると一本当たり15キロとなり、一果当た り100グラム平均だと実に150果を収穫しなければ ならない。 摘心側枝穫りが通常の栽培法であるから、有効な 側枝を一五本とすると、主枝一節当たり10果を穫る必要がある。どの数字をみても大変な努力を要するのであるが、これらを達成するための基本は、丈夫で長持ちする樹造りにある。トマトと異なりもともとあまり長持ちしないキュウリの樹を長くもたせるにはいろいろな条件が揃う必要があるが、水の管理もその一つであることは間違いない。

 

●定植前のハウスの水管理

丈夫で長持ちする樹は、まず根が深く張らなけれ ばならない。そのための水管理は苗を植える前のハ ウスの土から始まる。水の無いところへは根は伸び ていかないから、土の水分は深くまで届いていることが必要である。 それゆえ定植前には十分潅水を行うが、他の作物 と同様に表面までべたべた濡れていたのでは定植の

 

 

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際に土を練ってしまうし、その後の水切りもうまく行かない。トマトほどではないにしても10日から 二週間は前に雛水しておく必要がある。表面が少し 乾いてきた段階で定植を迎えることが望ましい。こ のときの潅水が不足して下層の士が乾いていると深い根を張らせることは難しい。

 

●定植後の水管理

定植直後は土となじませるため、根まわしの水を与える。この時の水は下層の水と連結させ、いわゆ る水の毛管を形成する役割も担っている。 根まわしの水をやり、毛管の水が連がった状態になると次の潅水をひんぱんにやらなくても苗が枯れ ることはなくなる。むしろ水をやり過ぎると生育は良くなっても根は浅くなるので好ましいことではな い。さらに水が十分だと節間が長くなり、葉が大きく薄くなって、地上部も長持ちする樹型にはならない。活着後のこの時期がキュウリの一生のうち一度だけ潅水を控えて生育を抑制することが必要な時期で ある。灌水の控え方を言いあらわすのは難しいが、 晴れた日には多少しおれがみられるくらい、と考えてよいであろう。 控える期間は摘心のやや前までである。樹を作る ために主枝の雌花は七~八節まで摘んでしまうが、 八~九節に着生させた初成りの果実が、潅水不足のため長さが不足して秀品にならないくらいはガマンするのが丁度よいのである。 この水管理により、根は深く張り、地上部は節間 がつまり、葉はコンパクトで厚い丈夫で長持ちする 樹型になって行くのである。 その後は生育や収量に準じて次々と潅水を行うが、 できれば点滴潅水のような表面だけでない潅水方法 を心がけ、つねに根を深いところに誘導することを 考えてもらいたいものである。

 

 

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摘み過ぎはマイナス  キュウリの整枝

 

栽培時期のいかんを問わず白イボキュウリが普及 してから20年以上が過ぎた。 白イボキュウリの仕立方法は摘心側枝採りが多いから、いかに上手に整枝をして雌花と葉を長期に確保していくかが管理のポイントになる。180~200センチで主枝を摘心すると子枝が発生し、子枝が長くなったらまた摘心して孫枝を発生させる、といったように、次つぎに新葉と雌花節を作っていくのが 最良である。

 

●摘み過ぎの害作用

樹体を整理するために、発生する枝先をどんどん 摘心してしまうと思わぬ害作用があることがある。 根が弱るために樹も弱り、枝の発生も果実の品質収量もガタンと落ち、そうそうと枯れ上がってしまう のである。かえって労力不足で枝の摘心もせず放置 した人が樹が長持ちして良い結果になることはよく あることである。

 

●上手な摘心のやり方

枝の放置は過繁茂を招き、最善の方法ではないはずであるから、上手な整枝の方法を会得しなければ ならない。そのコツは

①一度に何本もの枝の摘心をしない。多くても二 ~三本に止める。

②長く伸びそうな元気な枝は二節くらいで摘心する がそれ以外の枝は放置する。

③一本の樹のどこかに、絶えず元気な成長点を持つ

 

 

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枝がつねに四~五本存在するようにする。

④収穫が終わりに近づいたら一切摘心はせず、伸び放題にする。 などである。

上手な摘心で樹を長持ちさせ、秀品多収の儲かる キュウリ栽培をやりましょう。

 

 

 

 

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白変葉の発症メカニズムと防ぎ方

 

新しい農業技術はいろいろな方法で生まれてくるが、その一つに現場から問題点が指摘され、それを 研究者が取り上げて解決に向かう方法がある。キュ ウリの「白変葉」もそんな範ちゅうに入る登場の仕方であった。

 

●カリ過剰症のさきがけ

今でこそカリ過剰はハウスの連作障害のきまり文 句であるが、昭和四十年代の後半までは誰もそんなこ とは言わなかった。窒素過剰が主役だったのである。 福岡県のキュウリ産地朝倉農協管内でハウスの土壌を調査していた仲間が、農家から葉がクロロシス を生じるキュウリの生理障害の相談を受けた。聞いてみるとかなり広範囲に同じような障害がみられるようであった。それらのハウスの土壌を集中的に分析してみると 例外なくカリの集積がみられ、マグネシウムとの当量比をみると一対一に近く、マグネシウムが相対的 に少ない。そこで下された結論は、「カリ過剰による マグネシウムの吸収拮抗的欠乏症」で理論的にはすでに認められている現象であった。 対策としてはカリの減肥とマグネシウムの増施で ある。一件落着であったが、思えばこれが全国的な カリ過剰問題のさきがけであり、ハウスキュウリの 白変葉問題のはじまりでもあった。

 

●土壌消毒をすると白変葉が出る

「白変葉」と言う言葉は、一連のキュウリのマグネシウム欠乏症を研究している間に、筆者がその症状に対して与えた名称である。何事も名付け親となる

 

 

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ことはうれしいもので、この白変葉をはじめイチゴ の「ポット育苗」、メロンの「異常発酵果」などが現 在でも全国的に使われているのをみると、筆者の研究の歴史を振り返るような気がして大変なつかしく 思える。 さて白変葉はカリ過剰のみでは終わらなかった。 ほどなく高知で土壌消毒したハウスに限り、白変葉 が発生することが報告され、これは別項(p17土壌消毒のあとには完熟堆肥を)のような理論でアンモニア過剰が引き起こすことが判り、対策もたてられた。カリとアンモニアは全く異なるものではあるが、 プラスの電荷をもつカチオンであることは共通であ る。したがってイオンの吸収拮抗は同じカチオンで あるマグネシウムに対して同様に起きても不思議はなかったのである。

 

●リン酸過剰で生じる白変葉

話は難しくなってきたが結論は簡単である。カリと窒素(アンモニア)の過剰で白変葉が出るのだが、 リン酸の過剰でもそれが出ると言うことなのである。 ただリン酸はマイナスイオンであるから前二者とは 発生のメカニズムが異なる。リン酸過剰でマグネシ ウムが吸収されないわけではない。吸収はされるけれども、多量に吸収されるリン酸を体内で同化する際にマグネシウムが使われてしまうため、葉緑素を 作るためのマグネシウムが不足して結果的に白変葉となってしまう。 ハウス土壌の連作が続くと、カリ過剰も、病害を防ぐ土壌消毒も、リン酸過剰も当然頻繁に起きる。 そのいずれもが対応を考えて行かないとキュウリの 白変葉(マグネシウムの欠乏)に繋がって行くこと は偶然とはいえ恐ろしい。 葉は緑色であるから葉であって、白い葉ではキュ ウリを生産することはできないからである。

 

 

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ブルームレスキュウリ 生育良好な新台木も登場

 

キュウリもご多聞にもれず高品質時代であり、品質の良いものを出荷しないと、もうかる栽培にはな らない。 キュウリの品質には、外観上の品質と味や歯ざわ りなど内部的品質があり、それぞれ良い方が望ましいのであるが、なかなか百点満点のものは望めない。 外観はまず白イボ品種であること、真っ直ぐで長さ は20~21センチ、重さは100グラム、色は緑が濃く、 つや(テリ)があるものがよいとされている。「ブルームレスキュウリ」は、この「つや」が特別良いキュ ウリのことだと思えばよいだろう。 普通のキュウリを良く見ると多かれ少なかれ、果実の表面に白い粉が吹いているように見え、多いも のは真白に見えることもある。この白い粉をブルーム(果粉)という。ブルームは株が老化したり、温度が高過ぎたり、収穫後の日数が長かったりすると多くなるので、新鮮でない、まずいキュウリということで価格が安く買われていた。ところがある種の 台木に接ぎ木した場合に、ブルームが極めて少ないキュウリが成ることが判り、一躍ブームとなったのである。 キュウリはどんな作型のものでも、接ぎ木栽培さ れることが多いので、接ぎ木すること自体に問題は ないのだが、ブルームレス台木に接がれたものは寒さに弱く、収量も少ないので、栽培に注意が必要である。土づくりを十分に行い、若苗を植えて元気に 育てる必要がある。成ったキュウリはつやが良く色 が鮮やかである。皮が硬く、漬物の品質がいまひと つ良くないともいわれているが、値段は普通のもの より、1~2割高く売られているようである。

 

 

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半促成、促成栽培等では、低温の時期を経過する ので、低温で生育の悪いブルームレス台木は使いずらかつたのだが、低温に強く、収量も多く、品質も 改善された新しい台木(スーパー雲竜など)が出始 めているので、今後は安心して栽培ができるように なるかも知れない。

 

 

 

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キュウリの定植時期

 

キュウリでもトマトでも、果菜類は育苗してから 定植することが多い。「苗半作」といわれるように、 良い苗は良品多収の基礎であるから、苗作りに万全 の注意を払うことは勿論重要であるが、できた苗を 植付ける「定植時期」も負けず劣らず重要である。 良い苗ができたとしても、定植時期を誤っただけで その作が台無しになることだってあるのである。 現在作られているキュウリは冬春作、夏秋作を問わず短型白イボキュウリといって、主枝を摘心し側枝を発生させて子枝孫枝に多数の果実(一本当たり 80~100果)を着生させる栽培法である。この場合、収量を左右するのは発生する枝の数といっても過言ではない。枝の発生は温度や光線量、肥培によっても変わってくるが、一番影響が大きいのは苗質と定植時期である。育苗時に低温、乾燥、肥料切れに合わせず光を十分当てた若苗をうまく活着させたときに最高の発生をみる。 良い苗でも定植が遅れ、老化苗になると枝は発生しにくい。接ぎ木した場合でも播種後30日頃の本葉二~三枚時が定植の適期である。

 

 

 

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土壌消毒のあとには完熟堆肥を

 

ビニールハウスの野菜も、連作を重ねると生育が 不良になるのが普通である。いわゆる連作障害である。

連作障害の一番多い原因は土壌病害であるから、 そのまま栽培を続けるためには病害の対策をたてね ばならない。病害対策には

 

○薬剤による消識

○太陽熱消赤

○蒸気消毒

○耐病性品種

○接ぎ木栽培

 

などがあり、クロールピクリン等による土壌消毒が よく行われる。 薬剤による土壌消赤は、十分な薬量と適切な消歳 法で十分に効果が出るように実施する必要があるこ とはいうまでもないが、ここに困った問題がある。 消毒は完全にやればやるほど、病原菌も死滅するが その他のもろもろの微生物も死んでしまう。もろも ろの菌の中には、肥料を分解してくれる菌もいれば、 根を病気から守ってくれる菌もいる。それらが死ぬ ことにより、アンモニアの集積害(硝酸態窒素に分解する菌が少ないので)や、土壌病害が逆に多発するような予期せぬ事態を招くことがある。折角の消毒がアダになるわけである。 こんなことにならないようにするには、消毒、ガス抜きのあとに無病の完熟堆肥を少量(2~300キログラム/10アール)散布混入することである。10日もす れば有用菌は復活して安心して栽培ができるように なる。 消毒後の完熟堆肥の施用は、ハウスの土壌管理の常識と思ってもらいたい。

 

 

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速成床土のつくり方 1鉢上げの日でも大丈夫

 

野菜づくりは育苗してから植付けることが、非常に多いことはご承知の通りである。トマトやキュウ リのような果菜類はもちろん、葉菜類でもレタス、 ハクサイ、キャベツ、ネギ類その他が苗を植えている。

 これらの中でキャベツ類とネギ類は活着しやすいので、育苗床から苗を抜き取って、土をあまり根に着けずに本圃に定植している。しかし、その他のものは鉢で育苗して、根に鉢土を着けたままで植える ことが多い。 鉢育苗の場合の土を床土(または鉢土)というが、 良い苗をつくる場合に、良い床土がなければならな いことは当然である。いまトマトを10アール栽培すると仮定すると、3000の苗を準備する必要があ り、12センチの鉢で育苗すれば二立方メートル(約2トン)、15センチの鉢なら三立方メートル以上の床土を必要とする(キュ ウリはトマトの約半分)・消毒した土に堆肥や肥料を 混ぜて、長期間堆積して良い床土をつくるに越した ことはないが、量が多いのと、毎年同じに良い床土 をつくることが意外に難しいので、床土づくりはい つまでも農家を悩ませることになる。そこで、だれ にでもでき、しかも毎年同じものができる速成床土 のつくり方をお教えしよう。材料さえ準備して置け ば鉢上げのその日につくって使っても大丈夫である。 まず病害虫の無い土を準備し(やせた山土でもよ い)、完熟堆肥(肥料分の少ない腐葉土、パーク、ワ ラ堆肥など)を三~四割混ぜたものを元土として、 表のような肥料を入れれば出来上がり。スーパーIB を入れる量は、レタス、キュウリ、メロン等比較的小 さい鉢で育苗するものは多目の基準で、トマトをセンチ

 

 

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鉢で育苗する場合等は少な目とすればよいであろ う。使用する土や堆肥の眼や肥料分もさまざまなの で苦土石灰やスーパーIBの量で加減してほしい・ 多くの野菜や花の育苗でもこの処方は使えるので、 まず少量つくって試してから本格的な使用をするこ とをお勧めする。

 

 

 

 

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省力的な深耕法

 

連作障害の原因は数多くあるが、肥料要素の集積 や下層土の固結も人きな要因である。それらの回復には深耕が有効であることはいうまでもない。深耕 は固結した下層土を砕くとともに、表層の肥料の集積士と下層のやせた士とを混合する結果となって濃度障害の解消にもなるからである。 深耕に問題点があるとすれば、費用と労力がかかることと、やり過ぎによる表土のやせ地化である。

 

●地下部の環境諸条件は不均一でよい

永い間、地下部(土)の肥料や水分などの環境条件は均一なものとして、あるいは均一の方がよいと 考えられてきた。それは土壌学がイネやムギを中心 に研究されてきたことと無関係ではあるまい。しかしその時代でも果樹やトマトの肥料は全面にやることはなく、畦もしくは局所的に施されていた。それでよいことは栽培者には判っていたからであろう。 ハウス内土壌の研究が進み、近ごろではキュウリ など大型の果菜類では地下部(土)のさまざまな環境条件が不均一でも、その株の根の必要な場所に必要な条件があれば、他の土はあまり良くなくてもな んとかなることが判ってきた。たとえば

 

・水 根元から紡錘状に下方にあれば横方向にはあ まりなくてもよい。

・リン酸肥料 株の真下にあれば畦間にはやらなく てもよい。

・地温 根が多い真下が一部暖かい(または涼し い)だけでもよい。

・堆肥 畦の心部にあるだけでかなりよい。

 

などである。 深耕の効果は先に述べたように、土のやわらかさ と集積した肥料を薄めることであり、全部がそうな

 

 

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ることが望ましいが、それが費用や労力的に問題であり、うかつにやるとやせ地化が心配だとすれば部分深耕をやったらよい。他の環境と同様に深耕が不均一でも必要な位置で行えば効果に大差はないからである

 

●部分深耕のやり方

別項(P4「一条並木他え」ことはじめ)のよう にキュウリを一条並木植えする場合、畦幅は160 ~180センチとなる。ハウスの間口は5.4メートルとか6メートル とか決まっているから、三列とか四列のキュウリの 畦ができる場所もおのずから定まり、しかも毎年同じ位置である。 最初に部分深耕を行う場所はこの畦の心がよい。 普通のハウスであれば一間口に対して三~四列だけ 深耕すればよいことになる。トレンチャーでやるとしてその掘り伽は20センチほどであるから、全面積の 12~13%にしかならない。そのかわり深さはなるべく多くする。50~60センチ以上が望ましい。2 ~3年ごとにその両側を深耕して行けば、いずれは 全面に深耕が及ぶことになる。

 

●下層に粗大有機物を

深い溝ができたらただ埋め戻すのはもったいない ので底に粗大有機物を入れる。モミガラ、ムギワラ、 生ワラ、家屋の廃材、パーク、オガクズ、果樹の枝 などなんでもよい。ただし深いところ(50センチ以上) でないとキュウリに害がでる。これらを入れることによって深耕の効果を少なくとも土のやわらかさだけは長持ちさせることができる。 その上に土を埋め戻し、上部には完熟堆肥や肥料 (特にリン酸)を入れて作畦すれば定植準備も一緒にできてしまう。 欠点はなんでしょう?と言われて考えてみたがどうも考えつかない。そのうちに農家に質問されて思いついた。もしかすると部分的に土が深く軟らかく なるわけだから、トラクターの車輪がめり込むかも知れない。そこまでは気がつかなかった。ご注意を!

 

 

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『湿度は施設栽培の敵』ばかりではない

 

●「多湿」はハウスの「悪者」か

「多湿」はハウス栽培の代名詞の感がある。とくに 冬のビニルハウスは多湿だから病害が多発し、徒長、 過繁茂となって日当りも悪く、栽培がやりにくいなどなど、まことに評判がよくない。まるで悪者扱い である。悪い条件では良品多収は望むべくもないから、皆こぞってハウスの湿度を下げようとする。家庭用にさえ、まだあまり普及していない除湿器までがハウスに設置する例も少なくない。 なるほど空気中の水分が多過ぎる「過湿」は、べと病、疫病、灰色かび病などを多発させ、徒長や、 軟弱な過繁茂の原因となるから望ましいことではない。ビニルハウスが過湿となりやすいことも事実である。 しかしながら、ハウス内の空気は乾いていればいいというものではない。空気の乾き過ぎは、過湿に も劣らず野菜の生育には不都合な環境なのである。

 

●空気の乾き過ぎの害

作物の生長の源は光合成(炭素同化作用)であることは小学生(?)でも知っている。この光合成でさえ空気の乾き過ぎはマイナスに働く。さらに伸長成長、肥大生長ともに過乾はよくない。ただ過湿は、 前記のように、(病害の多発・過繁茂・徒長等)不都合を招くから、湿度は適当なところで止めて置くのがよいことになる。極端な過乾はどんな作物にもよ くないが、乾き過ぎの害は作物の種類によって影響 が異なる。キュウリ、ナス、メロンの果菜類や葉菜 類の全般は乾き過ぎの影響が問題となる作物であり、

 

 

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トマトやスイカなどは問題の少ない作物であろう。 また全面マルチや養液栽培は、ことに湿度が下がり やすい栽培方法である。

 

●ハウス湿度変化のメカニズム

ビニルハウスが多湿になりやすいのは、作物の葉や、潅水した土壌中の水が蒸発によってハウス内に 出てくるのを、フィルムによって密封してしまうからである。全面マルチは土からの蒸発を少なくするし、養液栽培は土への灌水をやらないのが普通だから乾きやすくなる。さらに窓を開ければ水分は外界へ逃げるから一般的には湿度は下がるし、暖房や太 陽熱で温度が上がれば湿度は下がることになる。

 

●フィルムの種類と湿度

同じ農ビでも種類(品種ともいう)によって湿度が違うことがある。今では特殊品となった有滴農ビ (あるいは古くなって無滴性の無くなったもの)は湿度が高くなるし、無滴性がよく霧の発生の少ない 農ビは湿度が高くなりにくい。農ビ以外の他の被覆 資材となると湿度の相違は一層著しくなるので、積極的な湿度調節を行う必要がある。それを怠ると良好な生育をさせて経営的にも有利な栽培をすることがむずかしくなるケースも出てくるので要注意であ る。

 

●農POフィルムハウスの湿度環境

近年使用の増えてきたPOフィルムのハウスでは、 空気が乾いて作物の生育が農ビとは違うとよくいわ れる。事実そのとおりであり、湿度が低過ぎると生育の良くないキュウリ・ナスや葉菜類では収量や品質の低下がみられるかも知れない。 いったいどうしてPOフィルムのハウスは空気が 乾きやすいのであろうか。また、POハウスで上手にキュウリなどを栽培するにはどうしたらよいので

 

 

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あろうか。今回はそこの点を考えてみよう。

 

●ハウスの密閉性が「カギ」

土の表面や野菜の葉面から出てくる水分が同じだとすれば、乾きやすいハウスというのはどこからか水分が逃げているはずである。水も漏れそうにないフィルムでも、ガスが逃げることは知られているので、水蒸気(ガス)として水が外界へ逃げる量が、 農ビよりPOの方が多いとすれば、容易にPOハウ スの乾燥は理解できる。ところが不思議なことに、 ガスの逃げやすさは農ビの方が大きいのである。したがって、これはフィルム面からの水の逃げやすさの問題ではない。 最近の研究ではフィルムの「すき間」だろうとい うことである。POフィルムは農ビと違ってべたつきが無い。だからフィルムの重なりの部分にすき間ができやすい。つま面や天窓、側窓には以外とフィ ルムの重なる部分が多いものであるが、各部のフィルムの密着が少ないとハウスの密閉性はかなり劣る ことになる。これがPOハウスの空気の乾燥の秘密のようである。

 

●ハウスの空気湿度の調節

空気の乾燥は、野菜の徒長を防ぎ、多くの病気の発生を少なくするから悪いことばかりではない。ただ乾き過ぎると生育や収壁に悪影響を及ぼすというに過ぎない。いずれにしろ湿度は調節できたほうがよい。ハウスの環境調節の技術が進んだとはいえ、 費用の面から、冷房と湿度調節は機械器具ではなかなかできるものではない。なんとか栽培管理の中で行うしかない。もちろん費用と労力は少ないに越したことはない。 POフィルムでのキュウリ栽培を例にとれば、まず全面マルチは止めるべきである。マルチは畦の肩までに止どめ通路には敷かない。次にマルチの無い ところに、(通路が主であるが)なるべく厚く有機物

 

 

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を敷く。有機物の種類は何でもよく、稲わら・モミ ガラ・堆肥・落葉その他を利用する。さらにはその上に潅水チューブを設置して、敷いた有機物を適度 に湿らせておく。これでほぼ万全である。空気が乾燥すれば、有機物中の水分が蒸散して湿度を上げて くれる。 この方法の優れているところは、過乾のみならず、 過湿による葉への水滴の付着も防止することができる点である。空気中の水分が過剰なときは、敷いた 有機物が吸湿剤となって水分を吸い取ってくれる。 一石二鳥である。敷いた有機物はつる上げ後に鋤き込めば、来年の堆肥の代替に十分なり得ることを考 え合わせると、一石三烏といえるかも知れない。

 

●養液栽培は特に要注意

まだ2%程度だが、養液栽培の施設が増えつつあ る。水耕にしてもロックウール耕にしても、水を使 う訳だから湿度は上がりそうなものなのに、土に灌水しないせいで土耕よりはるかに乾く。POフィル ムでの乾燥害が思いやられる。モミガラを敷くわけにもいかないから、砂を敷いて通路に潅水することになろう。 いずれにしろ空気の過乾もまたハウスの栽培の大敵であることを思い起こし、湿度管理に注意を払っ てもらいたい。

 

 

 

 

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リン酸過剰の八ウスでもリン酸施肥が必要?

 

●野菜の連作はリン酸の過剰になりやすい

野菜はリン酸肥料がよく効くものが多い。したがって新しいハウスでは、チッ素肥料の何倍もリン酸を施肥することが多くみられる。そのことは別に 間違っているわけではなく、もっと多く施肥しても いいのに、と思う場合さえある。問題は何年か経ってからである。野菜のリン酸の吸収品はチッ素の5分の1ぐらいであるから、多く与えられたリン酸の 大部分は吸われないで土の中に残って行く(ちなみに、リン酸肥料は雨や潅水で流亡することはほとん どない)。土質や施肥量によっても異なるが、数年も すると土壌中にリン酸の集積が進み、チッ素と同量 か、それ以下の施肥量でも十分生育するようになる のであるが、その時期にリン酸の施肥量を減らさな い人が多い。したがって、さらに二、三年経過する とリン酸過剰といわれるようになるのである。

 

●リン酸過剰の症状は

分析の結果リン酸が多いといわれても、外見的に生育の症状があらわれることはまずない。生育が不良になるだけである。ただし筆者らの研究によると、 極端にリン酸が過剰になると下葉が黄色くなり葉に 黄色やかっ色の斑点が出る。リン酸を吸収同化するために多量の苦土(マグネシウム)が必要なため苦土欠になるのである。そうなったら手おくれなのでそれ以前になんらかの方法を講じる必要があるのである。

 

●リン酸は土壌中にどれだけ必要か

土壌中のリン酸の集積度合は有効リン酸(トル

 

 

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オーグ法による)であらわされるのが普通であるが、 20~50ミリグラムあればチッ素と同じぐらいの施肥量 に減らしてもよい。100ミリグラム以上になったら過剰 障害の対策が必要となってくる。

 

●リン酸過剰土壌のリン酸施肥

リン酸が過剰なのであるからリン酸肥料をやらな いと考えるのが常識であろう。事実そのように指導 されていることも多い。ところが不思議なことに過剰土壌でもリン酸を施肥すると生育がさらに良くな ることが多い。これはいったいどうしたことなのだ ろうか。 リン酸が効くからさらにリン酸をやる。すると土壌はもっとリン酸過剰になる。まことに悪循 環である。ハウスのリン酸施肥のやり方は、この際 根本的に考え直す必要がある。

 

 

 

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●合理的なリン酸施肥

筆者の考えでは、リン酸を十分効かせながら土壌 のリン酸過剰を防ぐには、今の施肥法ではだめだと思う。それには野菜のリン酸に対する生育反応と土壌中のリン酸の動きを良く知らなければならない。

まず第一にどんな野菜でもリン酸はより若い、早い時期によく効くことを理解する必要がある。言い 替えると若い時期はリン酸が高濃度でなければならない。前に述べたリン酸過剰の土壌でもリン酸施肥が効果があるのはこのことに他ならない。若い野菜にとってはかなり高濃度でも過剰ではないのである。 生育がかなり進むとリン酸はそれほど必要でないのに高濃度だから障害となるのである。同じハウス土壌で生育初期は高濃度、後期には低濃度となるような管理はできるものであろうか。今の全面全層に施肥するやり方では、仮に元肥重点にやったとしてもうまくはいかないであろう。

全くやり方を変えてリン酸だけを植え溝施肥、植え穴施肥にしたらどうだろう。ハウス土壌のごく一 部のみに与えることになるから、リン酸濃度は少量の施肥でも高濃度にできる。しかも若い間は根の広 がりも狭いから不足することはない。生育が進むと施肥してない周辺に根が広がり、リン酸の過剰は防 げる。施用したリン酸が少ないから連作が進んでも 過剰集積は防げる。一石三烏の施肥法ではあるまいか。 以上の筆者の考えで、リン酸の施肥法を改善している産地は多い。リン酸肥料の原石は世界的に少な く、いずれは不足する。肥料の節約の意味でも、こ の施肥法は意義あるものとなろう。

 

 

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土壌のph管理

 

野菜類を栽培する場合、土のPHが低過ぎると出来がよくないことは良く知られている。いわゆる酸性害である。酸性害は野菜の種類によって異なり、ホ ウレンソウ、タマネギなどは特に弱く、ダイコンや イチゴは強いことが知られている。

土は、酸性になりやすい肥料(硫安や硫加、過石 など)を毎年多施用し、雨が多い時にPHが下がりやすいのだが、酸性になりにくい肥料(尿素やヨウリ ン、硝酸カリ)を使い、雨の少ない条件(ハウスや ガラス室)ではPHが下がりにくいのである。

酸性になった土は、消石灰、タンカル、苦土石灰 等を与えるとPHが上がって酸性が中和されることは ご存知のとおりである。

さて、酸性害は、激しい場合は全く商品になるも のが収穫できないくらいひどいものであるが、適切 な石灰施用で立派な収穫を得ることができる。日本 は雨が多く、酸性害が多い国だったのだが、近年は 酸性になりにくい肥料が多くなったこと、石灰を多 く施用するようになったことにより中性やアルカリ 性の土も多く見られる。ことに野菜のハウス栽培で は、雨が入らないこともあってPHが高い場合も少な くない。PHが高いことは野菜にとってよいことなのであろ うか。答えは「ノー」である。酸性と同じようにア ルカリ性も度が過ぎればよくない。特にダイコンや イチゴのように、酸性に強い野菜がアルカリ性の土 に栽培されると生育障害を来たしてしまう。多くは ほう素、亜鉛、マンガン、鉄などの欠乏だが、枯死 する場合もあるので油断できない。 アルカリ性になり過ぎた土は、石灰の施用を控え、 先に述べた硫安や過石を施用することにより回復さ せることができるのである。

 

 

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